⑯かっこいい父親になりたくて、銀行員を辞めてプロボクサーを目指す ~ジャマイカ人との出会い~

前回記事「⑮ボクサー用の縄跳び」

初回記事「①息子に会いたい」

目次

生活費を稼ぐためにセブンイレブンでアルバイトを始めた。時給は900円。

銀行員の時と比べるとあまりに給料の単価が低い。

更になんのやりがいもない。

頭を使わない仕事なので脳みそが劣化しそうだった。

でもあえてこの仕事を選んだ。

スポーツ漫画を読むと、練習で精いっぱいトレーニングに打ち込むだけでなく、あえて力仕事などをして練習以外でも鍛えている場面などがあるが、

あれは空想の話だ。読者がそうであってほしいという理想を描いているのであって現実はそうではない。

練習時間以外はいかに体を休め練習に備えられるかがとても大事になってくる。

なので引越し業者のような体を酷使する仕事はむしろ避けるべき職業だ。

そういった仕事を選択肢から削除し続け、限りなく理想に近い仕事がフィットネスジムらしい。

フィットネスジムで働いているボクサー達全員が口をそろえて言う。

フィットネスジムは休憩室!!!

一度フィットネスジムの仕事風景を動画で見せてもらった。

スタッフルームに籠って防犯カメラでジム内の映像を見ているだけ。もちろん仕事はそれだけではないのだがすることがほとんどない。

椅子に座ってコーラを飲み、友達の家に遊びに来たかのようにくつろぎながらジムのWi-FiでYouTubeを見ている。

映像の端っこに映っているスタッフは椅子で寝ている。

チャンピオン曰く

「これが仕事や」

なるほど。

残念ながら私は採用条件に合わずジムで働くことはできなかった。

しかしコンビニもきつい仕事ではない。

学生時代に経験のあるセブンイレブンで働けることとなった。

当時は2018年。インバウンドという言葉が世の中に浸透して数年が経っている。昔と比べて大阪市内で外国人を見ることが全く珍しくなくなっていた。

毎日外国人がセブンイレブンにやってくる。

ある日黒人の女性が私のレジにやってきた。カバンにジャマイカ国旗がデザインされたアクセサリーを付けている。

私はそれに反応した。

実は昔銀行員をしていたと同時にDJもしていた。

ジャンルはレゲエ、ジャマイカ発祥の音楽である。

銀行員でDJ、退職してからプロボクサー。

情報が錯綜(さくそう)するが、世間体は気にせず好きなもは何でもトライした。

その女性のジャマイカ国旗のアクセサリーが目に入ったとき思わず

「Are you Jamaican?]

と声をかけた。

相手はびっくりする!!

「なんでわかったの?あなた誰?」

レゲエが好きなことやDJをしていたこと、ジャマイカに行ったことなどを必死で伝えた。

ちなみにこの時英語はほとんど喋れなかった。中学1年生レベルの英語をひねり出すのがやっと。

それでも自分の国を好きでいてくれることがわかってくれたみたいでとても喜んでいた!!

会話が通じないが意気投合してレジでライン交換。後ろにお客様が並んでいたが無視をした。

申し訳ない。

気分が高揚した。日本に住んでいるとジャマイカ人と出会うことなんてほとんどない。

ジャマイカは日本からとても遠い。ブラジルの近くに位置しておりほぼ地球の裏側だ。貧困の国からはるばる日本には来ない。当然日本の文化も向こうでは浸透しておらず、日本に関する知識がほとんどない。

日本語なんてしゃべれない。

対するこちらは日本語だけしか話せない。

頑張って英語でやり取りをした。相手が送ってきた文章を理解するのに数十分かかり、自分が伝えたいことを文章にするのにまた数十分かかる。

毎日ラインでメッセージを送り合ったが、一日一回だけのやり取りしかできなかった。

それでも英語で会話できることが楽しくて必死に食らいついた。多分このチャンスを逃したら一生英語を学ぶ機会は訪れない。直感が訴えてきた。

今まで何度も英語に挑戦しては諦めを繰り返し、一向に中1レベルから抜け出せなかった。しかし今回は違う。単語帳や文法書の退屈な勉強とは違い、リアルな英語に触れながら勉強している。

楽しさがある。

「ワクワクは継続の最大の味方なり」

この日からボクシングをする傍らで英語の勉強も始めた。

YouTube、単語帳、NHK教育番組

ボクシング以外の時間をできるだけ英語の勉強に費やした。

そんなこともあって少しずつ英語をしゃべれるようになってきた。

この出会いは本当に大きかった。今はもうこのジャマイカ人とのつながりは無いが、この記事を書いている現在も英語の勉強を続けており、日常会話くらいなら普通にできるようになっている。

外国人の友達もいっぱいでき、今も世界が広がり続けている。

銀行で働いていたらこんな未来なんて決して訪れなかった。見る景色も感性も考え方もガラッと変わった。

きっとその人の世界の広さは挑戦の量に比例する。

挑戦する人たちが魅力的に映るのはこれが理由なのかもしれない。

英語を勉強することでこれからどんなチャンスが訪れるのか、

きっとまた新しい景色が待っている。

ボクシング道具紹介記事

次回記事「⑰アジアチャンピオンとの練習」

1 COMMENT

全部読みました!凄い努力されたんですね!
今後も陰ながら応援してます!!

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