2018年5月、ボクシング生活がついに始まる。この時年齢は32歳。グリーンツダボクシングジム(大阪)に入会する。
初めてのトレーニングは確かにきつい。しかしそれ以上に出費が痛かった。
先月までは銀行員。当然健康保険料などは前年度の銀行員の時の収入で計算されるので大きな出費。
記憶はあやふやだが、当時の固定費を記載してみる。あくまで固定費のみ。
健康保険料、24,000円
市民税、20,000円
国民年金16,000円
家賃 50,000円
ジムへの会費10,000円
養育費40,000円
これらを合計すると約16万円
飲まず食わず、電気をつけず服を買わず、スマホも所有せず静かにただじっとしてるだけで16万円の出費。固定費が16万。
なのにバイト代は月15万円。完全に赤字。
車を売って手に入れた50万円もすぐに消え、メルカリで不用品を売るもそのお金もすぐに消え、ものすごいスピードでお金が消えていく。
恐怖だった。
毎日掛け持ちで朝から夕方までアルバイト、土日ももちろんアルバイト。日曜に至っては朝9時から夜9時まで12時間のアルバイト。
月曜日と火曜日の午前中だけ仕事が入っていなかったので、その時間のみ休息をとることができる。でも昼からアルバイト。
確実に疲労が蓄積する。帰ったら温かいお風呂に浸かって疲れを取るようにと言われるが、毎日お風呂に入ってたら水道代もガス代も馬鹿にならない。
それにゆっくりしてられる時間もない。そんなに働いたら体つぶすぞ、ボクシングするなら絶対休日は必要、とみんなから言われるが、仕事をするしないの選択肢は自分にない。
働かないとボクシングができない。そんな生活をしているものだからもちろん故障も多かったし、体調も頻繁に崩した。
しかし故障をしようが体調を崩そうがアルバイトは休めない。どこかに遊びに行くなんて発想は微塵もない。更に追い打ちが来る。ボクシングの道具を必要最低限揃えるだけで10万円くらいかかる。
めまいがした。
こんなに金銭的に大変な思いをしてプロになり、やっと試合をして入ってくるファイトマネーはいったいいくらなのか、ジムの先輩に聞いてみた。
デビューしてから数年間は1試合5万円くらいらしい。
ボクサーは試合のダメージが残らないよう、どれだけ多く試合をしたとしても1年間に3試合しかできない。つまりボクサーとしての年収は15万円くらい。
でもこれが生活費の足しになるわけではない。
試合をする一カ月前は減量があるのでアルバイトなんかできるわけがない。アルバイト代が減るのだ。つまりファイトマネーとして稼いだ5万円はアルバイトを休んで稼げなかった分に消えていく。かなり厳しい。
ちなみに勝ち進んでもっと上のレベルになったらどうなるのか。同じジムにいる日本チャンピオンに聞いてみたが、アルバイトをしながらボクシングを続けているとのこと。チャンピオンなのにアルバイトをしなければならない。日本のプロボクサーの現実は相当厳しい。
どうやら自分は相当リスクの高い選択肢を取ったようだ。
夢を叶えるのが先か、お金が底をつくのが先か。