①かっこいい父親になりたくて、銀行員を辞めてプロボクサーを目指す ~息子に会いたい~

目次

きっかけは離婚である。

私は銀行員で個人向け営業を行なっていた。結婚もし子供も生まれた。

どこにでも起こることだとは思うが、子供が生まれてすぐ妻の様子が変わった。子供の世話で疲弊し、私に当たってくるようになった。わかっていたのでストレスのはけ口になればと思い我慢する。日に日に口調や態度がエスカレートし、ついに暴力までふるうようになってきた。

私の親のことまで蔑むようになり、妻はそのまま実家に帰ってしまった。自分はそこまでダメな夫だったのか。友達や、親にも相談する。解決の糸口がわからないまま妻に連絡するも罵倒されて会話終了。

なすすべなし。そしてある日、弁護士から手紙が届いた。「離婚の協議を始めたい」との内容だ。

理解ができなかった。なぜ離婚?妻のことを知る友人も「子供がいるのに自分勝手な決断だ」との意見。私と妻の間がぎくしゃくしていることを知っている友達からは、「お前の奥さんちょっとおかしいで」と味方をしてくれるが、どっちが悪いかなんて本人たちですら理解できていないのが離婚である。

後から知ったことだが、妻はパーソナル障害を持っていたらしい。初めて聞く言葉だ。症状の名前に「障害」とつくものの、実際のところは障害ではなく極端に性格が偏った人のことをそう呼ぶみたいだ。

例えば徹底的に相手を言い負かせようとする、絶対に非を認めない、常に自分が正しいと思っている等のチェック項目があり、ある一定数以上当てはまるとパーソナル障害と判断されるみたいだ。世間ではパーソナル障害を持っていると自覚している人はとても少ないらしく、そもそもこの症状の名前を知っている人自体少ない。

そしてそのチェック項目を見ると、なんとほとんど当てはまるではないか。その時に初めて妻の異常な行動が納得できた。果たして本人は自覚しているのかいないのか。

いずれにしても弁護士を挟んでかなりやり合ったので、最終的には喧嘩別れとなっている。

パーソナル障害をもった人を支えられず、また結婚前に自分との相性を見抜けなかったのにも非はある。イライラさせる行動をとったこともあったのだろう。どっちが悪いというわけではない。

子供は0歳、父親である自分の顔を知らないまま親子の間は引き裂かれた。

妻が出ていく前、2人の間があまりにぎくしゃくしていたので、このまま子供と会えなくなることをほぼ確信していた。すやすや眠る子供を抱きかかえながら夜中に泣いたあの日が子供を抱いた最後の日。あの柔らかい肌はもうさわれない。

離婚確定後は町中にいる子供たちを見ることすら辛い。自分の子供もいつかこれくらいの大きさに育つだろう、でもその成長は見届けられない。そういった思いが毎日浮かんでは消える。

きっと一生会えない。絶対ではないが、覚悟はしておいた方がいい。

ふと息子はこの状況をどう感じているのだろう、そんな考えが頭をよぎる。物心ついた時から父親がいない生活が当たり前で特に何も感じていないのか。それとも父親がいないことに劣等感を抱えて育っていくのか。

片親がいない友達と連絡を取ってみることにした。するとみんな口をそろえて「特に劣等感は感じておらず、寂しさもない。だっていないのが当たり前だから」とのこと。ちょっと安心した。できれば自分の子供もそうあってほしい。自分がいないことでマイナスの感情を抱えながら生きてほしくない。しかしある友達が言う。「俺は父親のことをなんとも思ってなかった。でもやっぱり心のどこかで男の子は父親のことを気にしてるよ、どんな父親だったのか絶対気にしてる。おれは探したよね。母親から父親の悪い話しか聞いてなかったけど、それでも一度会ってみたいって思ったよ。そして一度探そうと思ったら探しだせる方法があるんよ。いろんな道を辿って会いに行ったよね。だから子供が会いに来てくれる可能性は十分あるよ。」

この言葉に少し救われた。もしかしたらいつか会えるのかも。この友達は親が離婚しただけでなく、自分自身も離婚をし、子供と離れ離れ。そして最後に付け加える「おれの子供もいつか会いに来てくれるかもね、もし会いに来た時、ダサいオヤジじゃ顔合わせられないよね」

この言葉が心に響いた。もしあえるなら胸を張って息子と再会したい。これがお前のお父さんなんだと。

かっこいいお父さんと再会したら、少しは笑顔をみせてくれるのか。

ちょっとは安心してくれるのか。

養育費払っているだけが良いお父さんなのか。

離れ離れになった父親の役目は毎月決まった金額を入金してくれるATMになることなのか。

お金を渡す以上に大切なことがあるんじゃないか。

そんな想いがどんどん湧き上がってくる。どうすればかっこいいお父さんになれるんだ、何が子供のためになるのか。

それからしばらくは自問自答の日々。そんな時に目に入ったのがボクシングジムの看板。

強いお父さん、、、、、大切な人を体を張って守れるお父さん。

こんな自分でも少しはかっこよく見えるかな。

心の中で自分自身と会話する。

今まで一度もボクシングの経験なんかない。一番動けていた高校生のころから15kgも体重が増えている。見た目は決してかっこいいなんて言えない。そもそも運動なんてできるんかな。

でも、、、、かっこいいお父さんになりたい。

いや、

なる。

よし、始めよう。

そんな思いを抱えながらアマチュアのボクシングジムの門の叩いた。

かっこいいお父さんになるため、ボクシングを始めた。

映海へのメッセージ

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