⑬かっこいい父親になりたくて、銀行員を辞めてプロボクサーを目指す ~「体が壊れる」を理解した~

初回記事「①息子に会いたい」

前回記事「⑫スパーリングでボッコボコにやられる」

目次

何回スパーリングをしても強くなった気がしない。

いつまで経ってもパンチに力が入らないし動きが遅い。

リングに立つ度にボコボコに殴られる。

周りからあることをよく言われた

「パンチのもらい方が悪すぎる。」

パンチをもらうと完全に頭が跳ね上がる。当たったときにグッと顎を引いて耐えることができない。

このパンチのもらい方は審判からの印象が悪いだけでなく、脳へのダメージが大きい。

こんなもらい方してたら危ないぞ!!

とよく言われたがどうしたら顎を引いたまま耐えられるのかわからない。

もちろん首を鍛えるのも大切なのだが、首の小さな筋肉だけで耐えられるほどボクサーのパンチは弱くない。

パンチのもらい方もまた技術なのである。

そんなある日、体の異変に気付く。

とにかく頭がぼーっとする。一つのことに全く集中できない。

何もかもが上の空。サウナでのぼせたような感じがずっと続いている。

モチベーションも上がらない。やる気が出ない。

そんな状態で練習を始めるのだが、縄跳びでウォーミングアップを始めた時に少し頭痛があるのに気付いた。

着地したときの衝撃が頭に響くのだ。

縄跳びだけではない。サンドバッグを打つともっと痛い。

衝撃が頭に鈍く響く。

最初は風邪かなと思っていた。

でも次の日も、その次の日も頭が痛い。

トレーナーに相談してみた。

「それは頭の中で毛細血管が切れてるねん。スパーリングしたら大なり小なり血管は切れるもんや。でもそんなんは気にせんでいい。すぐに修復される。心配すんな」

え、ボクシングってそんな危険なスポーツなん???

当たり前かのように言うが、それってすごく怖いことじゃないのか??

「頭痛がしばらく続くようなら病院に行ってこい」

頭痛は今回が初めてだ。もう数日続いている。少し焦った。

最終的に放っておくと治ったのだが、スパーリングをし始めてすぐの時はガードの技術が本当に無く

パンチのもらい方が悪いせいで頭痛をよく起していた。

選手たちはスパーリングをした日は絶対にお酒を飲んではいけないと指導を受けている。

スパーリング後は必ず毛細血管が破れており、お酒で血の巡りを良くしてしまうと出血が酷くなるからだ。

また疲れを取るために湯船に浸かるのも禁止。とにかく血の巡りをよくするのはタブーだ。

出血が多いほど引退後に残る脳へのダメージが大きくなる。

スパーリングをした日は必ず頭を氷で冷やしながら寝ていた。コンビニで氷の入った袋を一つ買いそれを枕にするのだ。

周りのボクサーはスパーリングをした後も激しい練習をしていたが、

「毛細血管破裂する」

この言葉が怖くてスパーリング後の練習は控えめにしていた。

指導者側からするとあまりいい印象ではない、しかし後にこの選択をしててよかったと思えた。

ボクシングを引退してからしばらくの間、記憶力が著しく落ちていた。

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次回記事「⑭食事メニュー」

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