ボクシングプロテストについて

  • ボクシング界の人気について
  • 試験会場と試験頻度について
  • 会場に入ってからの流れ
  • プロテストを受けるまでの練習の目安。

今回はボクシングのプロテストを受けるまでの準備及びそれまでの練習についてお話していきたいと思います。

他の格闘技と違い、ボクシングにはプロの試合に出場するライセンスを獲得するためのテストがあります。キックボクシング、MMF、K-1にはありません。

ボクシング界の人気について

プロテストに受かったというとみんなからすごいと言われますが、世間一般で想像されているほどテストは難しくありません。近年のテストは簡単になりつつあります。一昔前と違いプロボクサーを目指す人が激減しました。それにともないボクサー人口も減っております。つまりボクシングの人気がなくなってきているのです。2010年くらいに亀田3兄弟が出てきましたが、あの選手たちをテレビで見なくなった頃からボクシングをテレビで放送することが少なくなりました。今では世界チャンピオンを決める世界タイトル戦ですらテレビで放送されなくなってきています。しかし1990年代であれば世界戦どころか日本チャンピオンを決める試合でも放送されていました。それだけボクシング熱が今と昔で違うのです。

人気が下がり、ボクサー人口が減ってくると、当然のことながら全体の試合数も減ってきます。試合数が減るとボクシング界に入ってくる資金も少なくなります。ですのでボクシング人口を減らさない苦肉の策として、JBC(日本ボクシングコミッション)はプロテストの合格基準を年々下げています。これにより、昔は難しかった合格基準がいつの間にか簡単になってしまったのです。簡単とは言ってもそれなりに練習は必要です。

どれほどの技術がいるのかの目安として私のプロテストの動画を載せておきます。

赤のグローブが私です。

ちなみに外国人にプロテストと言っても伝わらないようです。

日本人はプロボクサーのテスト、これを略してプロテストと言いますが、英語には”protest”抗議する、という単語があります。単に抗議するのではなく、国や大きい勢力に対して反対運動などをする意味として使われます。過去に外国人との会話で「来週の日曜日プロテストに行く」と言うと変な顔をされました。伝わらなかったので「プロテスト、プロテスト」と連呼すると、こいつやばいやつや!って顔で見られたのを覚えています。ではなんと言えばいいかというと、海外にプロになるための試験自体がないので、これに当たる言葉がありません。

プロライセンステストというと何となくニュアンスは伝わるみたいです。

驚かれるかもしれませんが日本のテストの方が珍しいのです。

試験会場と試験頻度について

試験会場と頻度は地方によって大きく違います。

私が住んでいる大阪府であれば会場はどこかのボクシングジムで行われます。頻度は1月を除く各奇数月に一回です。つまり3,5,7,9,11月にどこかのジムでプロテストが行われます。時期によって変更になるのですが、主に大阪帝拳ジム、グリーンツダボクシングジム、井岡弘樹ジムの3つのうちどれかです。東京であれば後楽園ホールで行われます。頻度はわかりません。きっと大阪以上の頻度でしょう。地方になると年に一回しかテストがない県もあります。

会場に入ってからの流れ

会場に入ると

①計量

②ペーパーテスト

③試験のスパーリング相手の発表

④実技試験の説明

⑤準備運動

⑥実技試験

⑦合否発表

この流れで進んでいきます。

①計量について

プロボクシングの試合は試合の前日に計量を済ませ、それさえパスしてしまえば試合当日までに何キロ体重を増やしてもルール違反にはなりません。一昔前は試合当日の計量だったみたいです。アマチュアの試合では今でも当日計量をしています。

プロテストの計量は単に体重を図るだけであり、何キロまでに落としてきなさいという決まりはありません。「プロになったらフェザー級で戦いたいから体重を57㎏に落とさないとだめだ」とかは全く考えなくていいです。この日に計る体重は後の試合に何ら影響しません。ですので自分のベストの体重で挑めば問題なしです。

ただ、同じ日にテストを受けに来る他の受験生は体重をできるだけ落としてから会場に来ます。

理由は簡単で、実技試験の際、受験生で体重の近い者どうしをペアにしてスパーリングをさせるからです。体重が重いとそれだけスパーリングパートナーが大きくなります。できるだけ体が小さく背の低い相手とスパーリングをして合格率を上げるために体重を軽くして会場に来ます。でも、試合の計量みたいにガリガリに痩せてくる受験生はめったにいません。そんなことをすると動けなくなります。普段より2㎏くらい落とすのを目安にしてください。

②ペーパーテスト

計量が終わるとすぐに問題用紙を渡されテスト開始です。開始と言っても学校のテストみたいに机に座りチャイムが鳴ってスタートというのではありません。用紙をもらったものの、どこに行けばいいのかわからずとりあえず地べたに座ってみると、各々が好きなように答案用紙に記入しているのが見えました。机はなく床で書いています。計量が終わった者から順々に好きな場所で問題を解いていました。しばらく周りの様子を観察してると、隣にいた受験生から「この2番の問題わからないんですけど、なんて書いたらいいかわかりますか」と完全にカンニングで問題を解こうとしている人がいました。周りを見渡すとほとんどの受験生が問題の答えを教え合っています。これは本当に試験なのか。そんな疑問をかかえながら試験問題を解いていたのを覚えています。

ほとんどの受験生が普段より少し体重を落として試験に挑みます。朝ご飯を少なめにして計量をしたので、当然お腹が空いています。受験生たちは答えを教え合うだけでなくウィダーインゼリーなどを口にしながらペーパーテストを受けていました。

不思議な時間でした。

③試験のスパーリング相手の発表

プロテストは大きく分けてペーパー試験と実技試験があります。

実技試験はスパーリングです。その日試験を受けに来た受験生どうしがスパーリングをします。このスパーリング相手を決めるために先ほどの計量があります。体重が近い者どうしペアを作りスパーリングをします。

④実技試験の説明

スパーリングパートナーを発表後に実技試験の説明があります。

まず採点基準。あくまで試験であって試合ではないので無理やり倒しに行く必要はなく、ディフェンスとオフェンスがしっかりできているかが採点の基準となります。具体的にはジャブ、ワンツーができているかを見られます。フック、アッパー、ボディは採点の基準になりません。下手にこれらのパンチを出して見栄えが悪いと減点の対象になります。ディフェンス面は頭を振りながら的を絞らせないように戦っているか、ガードができているかを見られます。極端な例ですが、どれだけボクシングがうまく相手のパンチをかわすことができてもノーガードであれば減点対象です。

そして何より大事なのはプロで戦うボクサーとしての気持ちです。審査員は技術以上にこの選手はプロとしてやっていけるのか、またやっていこうという覚悟があるのかを見ています。

どれだけボクシングが上手くても自分より強い選手と試合をする可能性は十分あります。その際試合を諦めたり逃げ腰になるような選手や、敬意を払わず対戦相手を馬鹿にした態度をとる選手はプロとしての姿勢を問われます。特に試験は試合ではありません。例え強い相手がスパーリングパートナーであっても向かっていく姿勢は大きく評価されます。

採点基準の説明が終わるとボクシング用具の説明もあります。ヘッドギアとグローブは試験会場が用意しており、自分で用意するのは下腹部への攻撃を防ぐファールカップとマウスピースくらいです。ただ、ヘッドギアとグローブは人数分の用意は無く使い回しです。たくさんの汗を含んでいます。正直気持ち悪いです。

軽い階級のペアからテストをしていくので重い階級になるほどみんなの汗を含んでいます。

⑤準備運動

試験の説明が終わると準備運動開始です。試験で実際使うリングに上りシャドーボクシングをすることができます。縄跳びは試合会場と参加人数によりますが、まずできないでしょう。会場は密集しているのでスペースを確保できません。

⑥実技試験

2:30×2ラウンドで試験を実施します。もし試験中にダウンを取り相手が動けなくなったときは、ラウンドの残り時間シャドーボクシングをし、形を審査員に見てもらいます。

⑦合否発表

合否はその日に確定し試験場に貼り出されます。

以上が試験当日の流れです。

プロテストを受けるまでの練習の目安

初めの方でも述べましたが、昔ほど試験は難しくありません。

1年間思いっきり練習に打ち込むときっと合格できるでしょう。ちなみに私を例に出すと31歳から本格に練習を始めて1年2カ月で試験に合格できました。試験が簡単とは言ったものの、この練習の1年間は正社員を辞め練習に打ち込んだ1年間でした。周りのボクサーを見ても運動神経が極端に悪い人でもない限りだいたい1年間くらいボクシングに集中すると試験に合格しています。当たり前ですが、エクササイズ感覚で練習している人は何年経っても合格できないでしょう。

以上がボクシングのプロテストについてのお話です。

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