今回はファイトマネーを絡めたスポンサーの話。
今まで何回か話にも出したことがあるが、ボクサーのファイトマネーはとても少ない。
ファイトマネーと聞くと試合ごとにボクシング協会かどっかから給料のようにお金が振り込まれるように思うがそうではない。
まずお金が振り込まれる代わりに試合のチケットがジムに送られる。そのチケットを出場選手たちが割引価格でジムから買い取り、買い取ったチケットを正規の値段で友達や家族に販売する。
割引価格と正規価格の差額が選手たちのファイトマネーとなる。ファイトマネーと言うと聞こえはいいが、実は自分たちで商売をして稼いでいるのだ。芸人さんたちが自分たちの舞台のチケットを手売りするのと一緒。
チケットが手に入るのは試合の1カ月前あたり。
減量や激しい練習でヘトヘトになってる中、自分たちで足を運んで売りに行く。これが結構きつい。
チケットを販売するのとは別に、スポンサーからのご祝儀もある。この収入があるとボクサーは本当に助かる。
私の場合はスポンサーが付かなかったが、勝ち進んでいくと少しずつ応援してくれるスポンサーが集まってくれる。このスポンサーたちをどれだけ抱えられるかが収益のカギとなる。
応援してくれるスポンサーが大きければ大きいほど入ってくる金額もでかい。
これはジム側も同じ。
できるだけ多く、そして大きな企業にジムのスポンサーになってもらいたい。そうするとジムの運営がしやすくなる。
私の所属していたジムもありがたいことに沢山のスポンサーに支えてもらっていた。
そのスポンサーの中に、毎月10日前後になると欠かさず大量の納豆を送ってくれる企業があった。
スポンサーは資金だけで助けてくれるわけではない。物やサービスで応援してくれることもある。
このスポンサーが送ってくれる納豆がまた美味しく、ジムのボクサー達から人気があった。ちなみにスーパーでは販売されておらず値段も高い。
納豆のスポンサーは毎月10日に大きな段ボールにいっぱいの納豆をクール宅急便で送ってくれる。
あまりに大量なので、この時はジムの大きな冷蔵庫が納豆でパンパンになる。
選手達は3パック入りの納豆を3セットくらい持って帰るのだが、一人だけ密かに10セット持って帰るやつがいた。
つまり30個。
賞味期限が10日もないのでその選手は一日3つ以上食べてることになる。
納豆が届くと「うわーーっ!!!!やったーー!!」と子供みたいに喜び、一人3セットまでという言いつけを完全に無視して10セット、多いときは12セットくらい持って帰っていた。
わたしが知っているだけでそれだけ大量に持って帰っているので、きっと隠れてもっと持って帰っている。
納豆が届き2、3日経ってもまだ冷蔵庫に残っていると、すかさずそのボクサーが残りを持って帰る。
かくいう私も多めに持って帰っていた。
ジムの運営を手伝っていたこともあり、「毎回4セットくらい持って帰っていいよ」と会長から許可が出ていたので6セット持って帰った(笑)
この選手と私のせいでジムの納豆の減るスピードがとても早かった。
納豆好きのボクサーはあまりにこの納豆が好きだったので、家まで待てず一刻も早く食べたいという衝動に襲われた。
ある日、「帰り道で納豆を食いながら帰った」と言っていた。
えっ?
歩きながら?
道端で?
お箸は?
それとも手で?
いろんな疑問が浮かんでくる。
「帰り道で納豆を食いながら帰った」
生まれて初めて聞く文章だ。
まずお箸はコンビニでもらえたらしい。
「コンビニに入ってお箸ちょうだいって言ったら簡単にもらえましたよ」
果たして買い物はしたのか。 。 。?
続いて座る場所だ。練習道具を持っているせいで両手が塞がり、歩きながら食べることはできなかったらしい。
なので電車の中で座って納豆を食べだしたのだとか。
身長184㎝の金髪の男が電車の中で急に納豆を食べだす。
「普通に食べれましたよ」というが、怖くて誰も注意できなかっただけだ。
ちなみにこのボクサーは新人王のチャンピオン。全てKO勝利!!
これくらいの精神力が無いとやはり上には登れないものなのか。
少しだけ納豆の食べ方の話をする。
納豆を食べるタイミングを考えたことがあるだろうか。
冷蔵庫から出してそのままご飯と一緒に。 。 。 。
まあこんな感じではないだろうか
納豆はとても体にいい。私も毎日食べるようにしていた。ボクシングを引退した今でも毎日食べている。
減量の時も納豆は欠かさず食べるようにした。
ただでさえハードな生活スタイルだったのでできるだけ体調が崩れない工夫をしていたつもりだ。
ただ、食べ方には少しだけ知識がいるようだ。
納豆の一番のメリットは納豆菌である。それが無ければただの匂い付きの豆になってしまう。
知っての通り、菌は温かいところでは活発に活動するが寒いところではその逆になる。
冷蔵庫内は冷たいので当然納豆菌の活動が弱まっている。弱まった状態の菌を体に取り込んでも納豆菌はほとんど力を発揮しない。
納豆菌を活発にするには冷蔵庫から出して30分くらい常温で置いておく必要がある。
さあ、今からご飯を食べようと思ってから30分間待つのは少し長いので、いつも冷蔵庫から納豆を出してその後にご飯の支度を始めるようにしていた。そしてできるだけ最後の方に食べるようにする。
一応これらは栄養士からのアドバイスだが、もし間違っていたら教えてほしい。
この納豆は私がジムに所属する4年間ずっと送り続けてくれて、引退して2年経った今でもジムに送ってもらっているのだとか。
ちなみに毎月送ってくれた納豆はこれだ。
ふるさと納税で手に入るらしい。
自治体に認めてもらうくらいの納豆なので本当にいい物を頂いていたのだなと今になって知った。
このように応援してくれる人達がいるからこそスポーツは成り立っている。かわいそうではあるがどれだけ才能があっても資金を確保できない人達はスポーツに参加できない。なのでどのスポーツ業界もスポンサーを獲得しようと必死だ。
100mを9秒で走るだけではお金にならない。
こんなに素晴らしい選手がいるよ!!と世間に知らせ、注目してくれるからこそ企業が集まりお金が入ってくる。
昨今ボクシングは昔ほど注目されるスポーツではなくなった。世界戦ですらテレビで放送されなくなっている。世界一になっている日本人選手は実は何人もいるのに、すぐに思い浮かぶ選手は井上尚弥くらいだろう。
誰にも知られていないということは、それだけ企業も集まってこない業界だということ。
よく、テレビに出演する暇があったら練習しろよ!!と批判する人がいるが、練習するだけでは生活費は稼げないし、試合に勝っても誰も注目しなかったらそれはそれで生活費を稼げない。
選手たちももちろん練習したい。上に行けば行くほど練習時間の大切さをわかっている人達ばかりだ。
でもスポーツに参加しようと思ったら、お金が入ってくる行動をとらないといけないのだ。
「夢」と「お金」は常に切り離せない問題なのは知っておいてほしい。